neutral
2 つの領域の中間
Concept
生きているとどちらでも無いがどちらでもある事がある。
どちらでもある事を肯定していく。
絶妙な力加減で自身の重心のニュートラルをとりながらそこに立つ。
完璧ではない存在、倒れそうで倒れない危うさこそが人間らしく映し出されている。
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朗読「あなたの真ん中で」
文 新道トモカ
心のどこかにあったであろう掴めそうで掴めない想い。
そんな想いに蓋をして何かになろうと必死だった。
なにかになる必要などないのだろうけど、心が走ろうとする。
ある日の夕方にゆっくりと落ちるオレンジが話しかけてきた。
もういいのだよ。ゆっくり寝たらいいのだよと。
静かな空と少し強い風が吹いてあったかい布団が剥がれたように目が覚めた。
そこは知らない場所だった。
裸足で大地を掴んでふらふらの足が精一杯の力で踏み込む。
立とう。
倒れそうな心を体の中心で誰かが支えてくれた。
ゆっくりとゆっくり。目を閉じて足のつま先の親指から一本ずつ空に向かって伸ばす。
浮き上がるように体が動き出した。
真っ暗の中で探し始めた。音や光や声がぼんやりと私に近寄ってきている。
すこしだけ手を伸ばしてみようかな。頭で思って体がどうしようか迷っている。
話をしよう。心が話したがっている。
風さん風さん。今から片足を空に向かって高く高く、できるだけ高く力一杯あげてみるから、すこしだけ力をかしてくれない?
そして穏やかな風が吹いて、台風の目のような時間が流れた。
知らない間に世界は進んでいて、知らない間に世界に飲み込まれていた。
溺れそうでも、もがくのはなんでだろう。
私の世界はどこなんだろう。
たくさんの不思議が頭の中を走る。
自分の心の世界はどんな大きさ、どんないろ、どんな形なのだろうか。
知ったからってなんだ。知ったところでどうするんだ。
そうやって避けてきた。
目を開けて真ん中に向かって歩いてみよう。
きっとそこにはキラキラする目印のようなものがあるだろうから。
大丈夫。あとすこし、もう少し。
掴めそうで掴めない想い。まであとすこし。
蓋を開けようとしたら勝手にあいた。
覗こうとしたら勝手に出てきた。
恐る恐る頭をみせ、顔を出して、出てきた。
ずっと会いたかった。
心は私に話しかける。覚えててくれてありがとう。
思い出してくれてありがとう。
気づいてくれてありがとう。
そう言って手のひらに溶けていった。
end